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ITKarte (ITカルテ)

医療情報,医用データの患者さんへの開示(カルテ開示), 医療施設間の連携(病病連携,病診連携), 生涯の医療情報の蓄積(生涯カルテ),  いつでも何処でも必要な医療情報へのアクセス(ユビキタス カルテ),をインターネットで実現するITKarte(ITカルテ)をご紹介します. ITカルテはインターネット上に構築された医用データ共有システムです.医師と医師,医師と患者さんの間の医療情報共有をサポートするツールとして利用されています.はじめての人は”カテゴリー”の「ITカルテのはじまり」をご覧下さい.

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ITと電子カルテ,地域連携についての誤解
このブログにたどり着いてくださった人々の検索用語に,電子カルテ,共有,地域連携などがあります.逆にその言葉で,このブログ以外のネット情報を検索してみると,様々なものが見られますが大まかに次のようなものです.

1. 会社がカウンセラーや医療施設とカルテを部分的に共有して,社員の健康管理に役立てるとのこと.
2. 富士通や日本電気,富士フィルムが中核病院と地域のクリニックなどとの電子カルテ共有サービスを開始するとの話.
3. 1や2に対する記事やコメント
4. 個々の医療機関が行っている地域連携の説明

4については,それぞれの施設が頑張っている現状報告と患者さんや地域に対する広告のようなものですね.
ところで,1や2についての認識や,それらに対するコメントには,気になる部分が多々あります.

まず,1について
健康管理とは言え,企業が行った健康診断の結果以上のものを会社(つまり上司やその他の社員)が,カルテを共有して見るなどと言うことが,簡単に許されて良いのでしょうか?
それから,これらのニュースに対する,記者のコメントが,これらのカルテ共有は健康管理に役立つと単純に納得しているようですが,危険なことです.
会社と医療施設が社員の健康情報を共有すれば,病気になったり治らない病気だと会社に分かった時点で社員は解雇という切り捨てに逢うのが世の常です.

2については,
これらのサービスは,技術的に簡単なことで,すぐにでも出来るはずのことであると,皆が考えているような節がありますが,それほど簡単なことではありません.ニュースになった会社のホームページを見ても,その仕組みが明確に書かれていないことも問題です.地域連携を実施しようと考えている病院や医院に正確な情報を届ける必要があるでしょう.
どのメーカーの電子カルテでも利用できる地域連携システムと宣伝されていますが,通常,そのような場合,データを提供する側の病院や医院はデータ開示用のウェブ対応データサーバを準備する必要があります.
中堅どころの病院がこれを導入した場合,周辺のクリニックへデータの開示は出来ますが,ウェブ対応データサーバを持たないクリニックからデータを発信することは出来ないと思われます.
カルテ共有により軽傷の処置は診療所で,設備が必要な手術は大きな病院で行うことができ,スムーズな連携が可能になるだろうというコメントが添えてあったりしますが,そのためには,双方向のデータ提供が必要で,各診療所にもウェブ対応データサーバが必要になります.たぶん1000万円以上して,メンテナンスか,メンテナンス費用が必要になるはずです.個々の診療所が準備するには重い負担です.

患者は,地域のどこに行ってもカルテがあり,同じ検査を2度されることは無くなり,他の病院を受診するときも紹介状(紹介状代)がいらなくなる,とか考えている人がいるようですが,これも間違いです.
CTやMRIの性能が違いますから,精密に調べるときには上等の器械で調べ直しをします.また,専門の医師が手術を前提に検査するときには,見る視点が異なりますから,再検査がそれほど減るとは思えません.それに日本の医療を検査漬けにしているのは患者の要求であり,要求に従わないときに起きるかもしれない”見逃し”による医療訴訟への恐れですから,検査は減りません.
そもそも,他国に比べて,CTやMRI,エコーなどの器械がたくさんあるから,好きなときに好きな医療施設で検査を受けることができるわけですから,その基盤を維持するためには,相応の費用が毎年発生するのです.
紹介状無しで,つまり紹介状代を払わなくても,他の病院でそれまでのデータが引き継がれるというのも誤解があります.少なくとも次の病院へデータを見せるための措置を取る必要がありますから,それなりの情報提供料が請求されるはずです.そうならなければ,病院はこのようなシステムを導入,維持するメリットが無いことになります.現状では,診療報酬上の,このメリットが全くないため,地域連携は,かけ声だけで,定着しない状態です.
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