"社会への発信"カテゴリーの記事一覧
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「どこでもMY病院」構想の実現に関する説明資料
を見ると,
全国どこでも自らの医療・健康情報を電子的に管理・活用することを可能にする「どこでもMY病院」構想,と謳ってある.
1ページ目に示される重点施策には,”国民が自らの医療・健康情報を電子的に管理・活用するための全国レベルの情報提供サービスを創出する。”とある.蓄積された情報を個人に開示し,これらの情報管理に国民自身が関与するということである.
そこで,この資料の10ページ,11ページを見ると,参考として先行サービス事例が提示されている.これらは,基本的にインターネットを利用することを前提としてある.
そうなると,データセンターのサーバと不特定多数のクライアントを結ぶことになるので,現状の技術で考えれば,SSLを通信の基本とするのが最も理にかなっている.事前にVPN装置やVPNクライアントソフトを全てのユーザーに準備させることは不可能であるから,通常のウェブブラウザで対応可能なSSLでのWebポータル通信か,SSL-VPNということになる.
通常のクライアントの利用方法がウェブブラウザレベルであればSSLでのWeb通信,ファイル転送やリソース利用が必要な場合にはSSL-VPNが利用される.
以上の事を考えると,”どこでもMY病院”を安価に構築するには,SSL基本のインターネット通信がベースになると考えられる.PR -
患者に渡す医用画像CD についての合意事項
というものがある.
一部抜粋すると
--引用
患者に渡す医用画像CD についての合意事項日本医学放射線学会
日本放射線技術学会
日本画像医療システム工業会
保健福祉医療情報システム工業会
日本IHE 協会
日本医療情報学会
医用画像情報を含んだCD を患者に渡す場合、受け取り手の側の状況を配慮し、臨床現場での--引用終わり
混乱を未然に防ぐため、以下の事項を合意し、これを各会員に周知するものとする。
(対象)患者の手を経て、他医療施設等に医用画像情報の入ったCD を渡す場合。但し、特定の
医療施設等に向けて、受け取り手が内容について了解している場合は、対象としない。
以下の事項を満たすものが望ましい。
1.オートスタートを避ける。
2.DICOM 違反のタグを含まない。
3.1CD に1患者ID とする。また、1CD に数スタディ程度とする。
4.IHE PDI(Portable Data for Images)準拠であること。
5.受け取り側の状況を考慮し、大量の画像枚数となることを避ける。
6.SS-MIX で示されている、あるいはIHE PDI で示されているファイル(DICOMDIR, DICOM 画像、
HL7 ファイルなど)以外のファイル(PDF、単体のJPEG、テキスト、表計算など)は、別ディスクとす
るか、あるいは同一CD に入れる場合は、PDI の示すとおり、Other files/folders のところに入れ、
そのことをディスク面あるいはREADME.TXT に明記すること。
となっている.
確かにこのような条件付けが必要かもしれない.autorunのソフトが独自タイプのファイルを使っているため,非常に汎用性がなく,受取手に不便なCDが見られる.
現在,ITカルテは,持ち込みCDからのデータ管理サーバを準備していますが,汎用性のあるCDが流通する環境はありがたいですね. -
このブログの最近の訪問者の検索ワードは”どこでもMY病院”が多くなっている.
20%近くに達する.
どこでもMY病院のようなシステムに対する関心が高くなってきたのかもしれないが,政府が提唱しているだけに,ビジネスチャンスと考えている企業や団体が多くなっているのかもしれない.
今回の地震,津波災害や原発の問題で避難した人々の場合も,何処か遠くのネットワーク上に医療データが残っていれば,処方の再開も簡単である.
災害時のバックアップとしても有効に活用できそうである.
そのためには,多くの人がこのようなクラウド型のシステムを知り,必要であると認識することがまず第一歩である.知らないことには,どんな便利なものも欲しいと思わないから,知ってもらうことが重要である.
そういう意味では,政府が”どこでもMY病院”を宣伝してくれることが,ITカルテの普及に対しても望ましい.
今回の東日本の災害で被災された人々や地域ができるだけ早く,落ち着いた生活に戻れることを願っています.
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地域医療再生システムへの投資として,救急医療と患者搬送の効率化のためのトリアージセンターを作ろうとする動きが見られる.
基本的にこのような取り組みは重要なことであると考えるが,コンピュータネットワークシステムの構築に関しては,多少なりとも発言しておきたい.
このようなトリアージシステムは,治療できる医師に画像が届かなくてはうまくいかない.トリアージセンターを作ったときに,送られてくる画像を見るのが放射線科医のみでは実用にならない.放射線科の診断医は診断を行うことを主に画像を見るのである.それはそれで重要なことであり,軽んずるものではない.
たとえば,脳出血を見つけたときに,内科的に様子を見て良いか,すぐに手術をすべきかについて,たぶん判断できるのは神経内科医か脳外科医であり,放射線科医はそのような判断をしたがらない.
夜,クモ膜下出血患者が発生したとき,患者の状態,手術の難易度,病院とスタッフの準備状況を考えて,今夜手術をするか,明日手術をするか,他の病院に頼むべきかを最終的に判断できるのは,経験を積んだ脳外科医である.
何が言いたいかというと,トリアージセンターで24時間放射線診断医が送られてくる画像を見るだけでは不十分で,同時に各診療科の医師に情報が届くようにコンピュータネットワークを作成すべきである.必要に応じて,自宅にいる医師や,複数の施設を動く医師がスムーズにデータにアクセスできるようなシステムでなくてはならない.
単なる読影センターの24時間営業の様なものでは,効率的なトリアージセンターにはならないと言うことを行政や予算執行者には理解してもらいたいと考える. -
i-Japan戦略2015
の中に 医療・健康分野の記述がある.
太字の部分はITカルテで実現可能である.青字の部分は,技術的にはITカルテがクリアしている内容であり,システム規模を拡大すれば自ずと実現されることである.
重要なことは,このようなシステムを構築するためには,アクセス権のフレキシブルな与奪手段が肝要であり,その仕組み無しには,莫大な投資を行っても効率的な社会基盤の実現は難しいことである.
以下抜粋引用-----------------------
(2) 医療・健康分野
(将来ビジョン及び目標)
2015 年までに、医療改革を進める上で、少子高齢化、医師の不足・偏在等に起因する各種問題の解決に対し、デジタル技術・情報が大きく寄与し、医療の質の一層の向上が図られる。
具体的には、国民誰もが質の高い医療サービスを享受できるよう、国としてデジタル技術・情報の活用支援を進めることにより、地域の医師不足等の医療が直面する問題に対応する。また、国際的な議論の動向も踏まえつつ、①個人が医療機関等より電子的に健康情報を入手し、本人及び医療従事者等が活用することと、②匿名化された健康情報を疫学的に活用することから成る「日本版EHR(仮称)*」を、実現する。
加えて、世界最速で少子高齢化が進んでいる我が国が、合理的な費用で世界最高水準の医療を提供し危機を克服する成功モデルを諸外国に紹介することによって、世界の医療サービス向上に貢献できる。1.地域の医師不足等の医療が直面する問題への対応
(1)遠隔医療技術の活用により、通院が時として困難な患者(へき地に居住する妊婦、高齢者・障害者等)が、自宅にいながら、より質の高い医療を受けられるようにするとともに、地域の医療機関においても遠隔地にいる医師等のサポートにより画像診断等の専門性の高い医療を受けられるようにする。
(2)スキルアップやキャリアアップを目指す医師等が安心して地域医療に従事でき、また、女性医師等が継続的に働けるよう、全国どこでも技術の維持・向上を可能とする。
(3)医療機関におけるデジタル基盤の整備により、医療業務の効率化や医療従事者の過重労働軽減、経営改善等を図る。併せて、地域医療連携を実現する。
(4)救急医療の現場等で、救急隊や医療従事者が患者情報を迅速かつ正確に把握し、搬送先の医療機関の選択及び医療機関での救急患者の受入れを迅速かつ円滑に行えるようにすることで、患者がより安心して質の高い医療サービスを受けられるようにする。
(5)医療機関、介護事業者、保険者、地方自治体等の連携の下で、在宅医療を受ける患者や被介護者の地域特性に応じた健康管理を実現する。*EHR とは, Electronic Health Record の略。欧米諸国、韓国、シンガポール等世界各国で普及に向けた取組が進められている。
2.日本版EHR(仮称)の実現
(1)個人が医療機関等より入手・管理する健康情報を医療従事者等に提示することにより、医療過誤が減り、過去の診療内容に基づいた継続的な医療を受け、不要な検査を回避できるようにするとともに、セカンドオピニオン等の活用により、自らが受ける医療・健康サービスの選択を行えるようにする。
(2)処方せんの電子交付(遠隔医療技術の活用により在宅医療を受ける患者に対する交付を含む。)及び調剤情報の電子化により、処方情報から調剤情報への変更内容の患者及び医療機関に対するフィードバック等を実現し、より安全かつ利便性の高い医療サービスを受けられるようにする。
(3)匿名化された健康情報を全国規模で集積し、疫学的に活用することにより、医療の質を向上させる。
(方策)
1.地域の医師不足等の医療が直面する問題への対応
(1)遠隔医療に関する科学的根拠に基づくデータ(エビデンス)を蓄積し、安全性・有効性等に関するエビデンスがあると検証された遠隔医療技術について、適切な導入及び適用範囲の拡大を図るとともに、診療報酬等の適切な活用を行う。特に、患者と対面する医師を遠隔サポートする医療機関へのインセンティブ付与の実現方策を検討する。
(2)医師等が地域医療に携わりつつ、専門医等の資格の取得に向けた研究や技術の維持・向上を図ることができるよう、また、出産・育児により離職を余儀なくされる女性医師等の勤務の継続・復職支援を行えるよう、遠隔教育等の環境及び制度を整備する。
(3)適切な価格で医療機関等における情報処理環境の整備に資するASP・SaaS 等を活用した電子カルテシステムや遠隔診療機器等の導入支援等を行い、(方策)2.(1)、(2)の活用を含め、地域医療連携や健康管理等のための医療機関等の間の情報連携の仕組みを整備する。
(4)医療従事者の業務負担の解消又は軽減に向けて、デジタル技術及び医療
クラークの活用を含んだ業務プロセスの見直し(BPR)の内容を明確化する。併せて、デジタル技術を理解・活用できる医療クラークの養成及び必要な医療情報システムの標準化等を促進する。
(5)レセプトオンライン化の導入に伴う諸課題を解決しつつ、医療機関・薬局等におけるデジタル技術導入の取組を引き続き支援し、レセプト請求審査業務等の医療保険事務の効率化を図る。
(6)救急患者等の搬送先の選択及び医療機関での受入れの効率化・円滑化に資する連絡支援システム等を整備する。
2.日本版EHR(仮称)の実現
(1)医療機関等における安全性が十分担保されることを前提に、レセプトオンライン化を契機に医療機関等で実現されるネットワーク接続環境等を有効に活用し、医療機関等の間の安全・安心な情報連携の仕組みを確立する。
(2)客観的な医療データ(検査結果、処方・調剤情報及び診断名)等を希望する個人へ提供する仕組みを確立するとともに、個人に提供された情報を本人及び医療従事者が活用し、かつ本人が、誰が情報にアクセスしたかの履歴を確認できる仕組みを実現する。
(3)上記(2)を実現するための医療・介護分野に係るID基盤を、社会保障カード(仮称)構想の検討状況を踏まえ早期に構築する。
(4)健康情報の特殊性及び関係する個人情報保護制度の整備状況を踏まえつつ、以下の事項を円滑に行えるよう、必要な制度等の手当を行う。
①医療機関から患者本人へのデジタル化された診療情報等の提供
②健康情報を疫学的な統計情報として活用するための匿名化
(5)処方・調剤情報のデジタル化に必要な制度を確立し、処方せんの電子化及び医薬品データマスタ等標準の整備並びに維持を行う。
(6)個人に適した健康指導を行う等、個人の健康情報を活用した健康サービス産業群を創出するため、個人の健康情報の安全な収集及び取り扱い方策の明確化等の環境整備を行う。
(7)レセプト情報・特定健診情報等データベースシステム(仮称)の分析・活用方策に関するルール及び仕組みを整備する。また、医療の質の向上の観点から収集するデータの対象の拡大のための要件を明確化する。
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このブログにたどり着いてくださった人々の検索用語に,電子カルテ,共有,地域連携などがあります.逆にその言葉で,このブログ以外のネット情報を検索してみると,様々なものが見られますが大まかに次のようなものです.
1. 会社がカウンセラーや医療施設とカルテを部分的に共有して,社員の健康管理に役立てるとのこと.
2. 富士通や日本電気,富士フィルムが中核病院と地域のクリニックなどとの電子カルテ共有サービスを開始するとの話.
3. 1や2に対する記事やコメント
4. 個々の医療機関が行っている地域連携の説明
4については,それぞれの施設が頑張っている現状報告と患者さんや地域に対する広告のようなものですね.
ところで,1や2についての認識や,それらに対するコメントには,気になる部分が多々あります.
まず,1について
健康管理とは言え,企業が行った健康診断の結果以上のものを会社(つまり上司やその他の社員)が,カルテを共有して見るなどと言うことが,簡単に許されて良いのでしょうか?
それから,これらのニュースに対する,記者のコメントが,これらのカルテ共有は健康管理に役立つと単純に納得しているようですが,危険なことです.
会社と医療施設が社員の健康情報を共有すれば,病気になったり治らない病気だと会社に分かった時点で社員は解雇という切り捨てに逢うのが世の常です.
2については,
これらのサービスは,技術的に簡単なことで,すぐにでも出来るはずのことであると,皆が考えているような節がありますが,それほど簡単なことではありません.ニュースになった会社のホームページを見ても,その仕組みが明確に書かれていないことも問題です.地域連携を実施しようと考えている病院や医院に正確な情報を届ける必要があるでしょう.
どのメーカーの電子カルテでも利用できる地域連携システムと宣伝されていますが,通常,そのような場合,データを提供する側の病院や医院はデータ開示用のウェブ対応データサーバを準備する必要があります.
中堅どころの病院がこれを導入した場合,周辺のクリニックへデータの開示は出来ますが,ウェブ対応データサーバを持たないクリニックからデータを発信することは出来ないと思われます.
カルテ共有により軽傷の処置は診療所で,設備が必要な手術は大きな病院で行うことができ,スムーズな連携が可能になるだろうというコメントが添えてあったりしますが,そのためには,双方向のデータ提供が必要で,各診療所にもウェブ対応データサーバが必要になります.たぶん1000万円以上して,メンテナンスか,メンテナンス費用が必要になるはずです.個々の診療所が準備するには重い負担です.
患者は,地域のどこに行ってもカルテがあり,同じ検査を2度されることは無くなり,他の病院を受診するときも紹介状(紹介状代)がいらなくなる,とか考えている人がいるようですが,これも間違いです.
CTやMRIの性能が違いますから,精密に調べるときには上等の器械で調べ直しをします.また,専門の医師が手術を前提に検査するときには,見る視点が異なりますから,再検査がそれほど減るとは思えません.それに日本の医療を検査漬けにしているのは患者の要求であり,要求に従わないときに起きるかもしれない”見逃し”による医療訴訟への恐れですから,検査は減りません.
そもそも,他国に比べて,CTやMRI,エコーなどの器械がたくさんあるから,好きなときに好きな医療施設で検査を受けることができるわけですから,その基盤を維持するためには,相応の費用が毎年発生するのです.
紹介状無しで,つまり紹介状代を払わなくても,他の病院でそれまでのデータが引き継がれるというのも誤解があります.少なくとも次の病院へデータを見せるための措置を取る必要がありますから,それなりの情報提供料が請求されるはずです.そうならなければ,病院はこのようなシステムを導入,維持するメリットが無いことになります.現状では,診療報酬上の,このメリットが全くないため,地域連携は,かけ声だけで,定着しない状態です. -
地域医療連携,ITによる医療の連携,ユビキタスカルテ,ITによる医療情報開示など,さまざまなテーマが唱えられているが,現状を見るとうまくいっていない.
何故か.
ITカルテは,インターネットさえあれば,いつでもどこからでも利用できるように,出来るだけ利用に当たってハードの制約がかからないように設計してきた.ところが,現状でITカルテの利用促進を妨げている大きな問題は,全く基本的なことである.
診療の場にインターネットが無いことである.私の勤務している病院では,外来診療の場にインターネットがあり,院内電子カルテもITカルテと繋がっているが,多くの病院や医院では,外来診療の場にインターネットすら無いところが未だに多い.医局(医師のオフィスみたいなところ)では,インターネットが利用できるが,患者さんを前にする診察現場にはインターネットが来ていないのである.
勤務医師は,診療現場にインターネットがあることを望んでいる人も多いと思われるが,経営者の方は,そんなものは必要ないと考えているようである.
最近,一人でクリニックを開業する医師は,診察デスクにインターネット接続のパソコンを置く人が多くなっているが,これらは特別な状況であるようだ.
あらゆる医療現場にインターネットが整備されるまで,もう暫くだろうか.